F1スパイ事件 急展開

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今日からモンツァGP開幕ですが、昨晩あたりから大きなニュースになっているようです。例のマクラーレンに対するスパイ疑惑事件に関しては、9/13の国際控訴裁判所で最終審理が行われ終結するはずでした。これは既にニュースであったように、7月に証拠不十分という事でマクラーレンチームとしては実質無罪の判決が出ていた訳ですが、当時フェラーリがかなり不快感を示したので、それによりフェラーリの機密情報が不正流用されたことが今後明らかになった場合には、FIA世界モータースポーツ評議会を再招集し、事実認定出来れば今シーズン(場合によっては2008年も)の選手権から除外される、という話で終わっていました。
その後、新たな証拠が出てくる動きも無く、9/13の国際控訴裁判所で最終審理が行われ終結すると誰もが予想していたと思いますが、ここに来て「新たな証拠の提示があった為、世界モータースポーツ評議会が再召集される」という、マクラーレンにとっては最悪の事態に向かって動き出しました。しかもこの証拠を提出した人物というのが、現マクラーレンドライバーのアロンソとデラロサであるという話が出てきています。


まず、このスパイ事件の説明ですが、フェラーリのチーフメカニックであったナイジェル・ステップニー(解雇)が、ロス・ブラウンの休職後に希望のポストにつけなかった事から、フェラーリ離脱及びマシン破壊工作を目論み、更には2007年フェラーリの数百ページに渡る機密文書(設計デザインからレースの戦略などが書かれた文書)をマクラーレンのチーフデザイナーであるマイク・コフラン(停職中)に渡し、マクラーレンがフェラーリの情報でアドバンテージを得た(一例では、開幕戦後のフェラーリが違法なアンダートレイを使っていると指摘したのがマクラーレンであった)とされる、一連のスパイ事件です。

ステップニーは、「自分で機密文書を持ち出していない、これはフェラーリの罠だ」と言っていますし、コフランは「匿名で誰かから送られてきたが、それを利用した事はない」、と反論。しかし、この機密文書がマクラーレン(コフラン宅)に存在していた事は事実ではありますが、それをもってアドバンテージを具体的に与えたという「証拠」を提示するのは、殆ど不可能ですし、結局チーム側は前述通り実質無罪となっていたのですが、ここに来ての急展開・・・。

世界モータースポーツ評議会が再召集されるという事は、よっぽど大きな証拠提示があったという事でしょうし、これが今シーズンのF1を大きく変える出来事になる可能性が大きくなってきたように思います。
事の発端は、最近FIAから「ドライバーが持っている情報があれば報告する義務がある」というファックスが届いてたという事です。これに反応してアロンソとデラロサが情報を提供したのではないかと言われています。内容は、あくまで噂段階ですが、アロウズ時代からの長い付き合いであるコフランとデラロサが、例の機密文書を見ており、そこに書かれていたフェラーリのセットアップに関する機密情報を、Eメールでアロンソとやり取りしたという事のようです。もしこれが事実なら、再召集されたというのも頷けるくらいの証拠ですし、ある意味決定的な証拠になってしまうでしょう。となると、先述したように「事実認定出来れば今シーズン(場合によっては2008年も)の選手権から除外される」という事が現実味を帯びてきます。

ここで注目すべきは、このドライバーが何故自分のチームの不利益になる情報を提供する気になったのか。もしかしたら、FIAからのFAXを見た上で隠す事は、万が一それが発覚してしまうと自身のドライバーキャリアに不利益を被る可能性(例えばスーパーライセンス剥奪など)があったことでしょうか。ただ今回の問題は、更に奥が深いのかもしれません。ここ一連のアロンソ・ハミルトンの問題で、アロンソはチームを抜けたがっているという報道がありましたよね。実際アロンソとチーム間は上手くいっていないと思われます。そしてフラビオ・ブリアトーレは彼が戻る事は大歓迎だ、しかし彼はマクラーレンとの「契約」があるからね。と発言しています。しかしこの「契約」はこの事件が有罪認定されれば、2008年含む選手権除外の可能性があるので、いとも簡単に契約解除できる可能性が非常に高いはずです。そうなると得する人物は誰になるのか・・・。

また別の可能性を考えると、ステップニーは最初から「私を誰かがはめようとしている」と言っています。ロス・ブラウンが抜けた後のポストに入れず、フェラーリに不満を持っていたことは明らかですし、別チームに接触していた事も報じられています。実際この事件が明るみになった時からも、私個人的にはステップニーがはめられているのでは?とずっと思っていました。モナコGPでのフェラーリ燃料タンク付近に発見された謎の白い粉も、マシンを破壊する目的でステップニーが入れた、とされていて、実際ステップニーのポケットからも同じ粉が発見されたようですが、ホントに破壊工作するなら、そんなバレバレの方法を行うのだろうか?という疑問がどうしても拭えません。ステップニーからコフランに渡ったとされる機密文章も、両者とも否定しています。ステップニー自身、その書類を見れる立場にありましたが、それを持ち出す事は決して無い、と言ってますし、コフランもどこからか自宅に送られてきたといってます。
不満を持っていたステップニーを解雇できる方法、ステップニーが他チームに移籍できない(情報漏えいをさせない)ようにする方法、ライバルであるマクラーレンに不利な状況を作れる方法、情報を流出させるリスクはあるが誇り高いロン・デニスならその情報をアドバンテージに生かそうと考える事は決してしないとの計算、そしてこれらを全て計算の上で、今シーズンの流れに合わせて「仕組んでいった」チームがあるとすれば・・・。

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色々と書きましたが、現時点では私の個人的な妄想ではありますが、今回の件は何か大きな力が働いているようにしか思えませんし、近代F1では見られない物凄い大きな結末を迎えそうな気がします。F1の世界では、常々何か問題が起きた時、誰が損をして誰が得をするか、というところが最終的な目的地になる事が殆どです。今回もそういったところから見てみましたが、言いたい事は一つ。

こういう事件からシーズン全てを台無しにされるのを楽しみにしているファンは誰一人居ないという事です。これでマクラーレンに有罪判決が出れば、コンストラクターポイントは当然剥奪でしょうが、不正にアドバンテージを受けたという事であれば、両ドライバーのポイントすら影響が出る可能性が非常に高いです。万が一そうなれば、労せずしてフェラーリがチャンピオンになりますし、ドライバー争いもマッサとライコネンのどちらかがチャンピオンになるでしょう。果たしてそれを誰が喜ぶのでしょうか。ファンも喜びませんし、フェラーリにしても名誉あるタイトル獲得とはお世辞にもいえません。マッサとライコネンもしかりでしょう。しかし、こういう動きの裏には「必ず」得をする人間がいるのです。

私たちが見たいのは、素晴らしいレースを戦い抜いた末に頂点に辿り着いた「勝者」を見たいのであって、政治論争の上に決定した「勝者」を見たいのではありません。

(9/14追記)
続報:F1スパイ事件 判決確定
http://www.pushpushpush.net/archives/2007/09/14105219.php