F1スパイ事件 判決確定

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遂に最悪の結末が発表されました。9月12日パリで開催された世界モータースポーツ評議会の臨時会議において、例のスパイ事件に関する裁定が下されました。マクラーレンチームの2007年シーズンのポイント全剥奪と1億ドルの罰金というモーターレーシング史上最高額のペナルティ。これでコンストラクタータイトルは自動的にフェラーリに確定したという事で間違いありません。またドライバーズポイントに関しては、ドライバーからの証拠提供があったことからFIAが証拠提出の見返りとしてドライバーズポイントは処分されない、という事です。よってチャンピオンシップに関しては、今後マクラーレンのドライバーは今まで通り戦えるわけですが、仮にマクラーレンのドライバーが優勝したとしてもマクラーレン関係者が表彰台に登ることは無いとの事です。
Yahooニュースの方では2007/2008シーズンの「出場停止」と報道されていましたが、これはちょっと表現が間違っていますね。あくまで参戦はOKですが、コンストラクターポイントが剥奪・シーズン最後まで加算される事は無いという事です。2008年シーズンに関しては、フェラーリのテクノロジが使われた痕跡があるかどうかを調査してから処分を決めるという事のようです。
沢山書きたいことがあるので、以下長文になると思いますが書き綴っていきます・・・・。




まずこの判決ですが、非常に上手く巧妙に出来た内容だと思います。まずドライバーズタイトル部門が生き残った事に関してですが、これがもし無効(アロンソ・ハミルトンもポイント剥奪)になってしまったとしたら、FIAに対する風当たりは凄まじいものになっていたでしょう。いうまでもなく、その時点でチャンピオンシップはマッサかライコネンのどちらかに確定する事を意味していますし、これまで物凄い活躍をしたマクラーレンの両ドライバーにまで処分が行くと、イギリス・スペインで批判の嵐になるでしょう。それを上手く回避するために、事前にドライバーへファックスを送って情報提供を呼びかけたのでしょう。
その内容は前回投稿でも書きましたが、「知っている情報を提出して欲しい。知っていて隠す事はあなたの為にならない」という内容ですよね。その中にはしっかりと「もし情報提供をしてもらえれば、見返りにペナルティを下す事は無い」という一文も書き添えてあったみたいです。この状況で隠し通す事は、万が一それがバレた場合、ドライバー生命の終わりを意味する事であり、誰でも知っている事を全て話すと思いますよね。そうなる事を計算した上でのファックスだったと思います。そうなれば、証拠は得られる、その代わりドライバーに免責が生まれるので、ドライバーズタイトル争いに影響は出ない、という両得がFIA側には生まれます。この辺りの計算をしたうえで、行われた動きだったと推測します。

しかし、色々な情報が錯綜していて何が真実か分かりにくい部分がありますが、私個人的にはマクラーレンがその情報を元にアドバンテージを得たとは到底思えないんですよね・・。いまのF1は非常に複雑なバランスが絡み合って構成・設計されているので、もしフェラーリの優位なパーツ設計図があったとしても、それをポン付けして効果が生まれる事は決してありません。それを装着する為にその前後のバランスも全て考え直さなければ効果が出る事は無いのです。コフランもエンジニアリング的興味から中身を見た、といってますが、それをチーム内で議論したような形跡もありませんし、あの誇り高いロン・デニスが、フェラーリの機密資料からアドバンテージを得る為にチームを動かすとは到底想像できません。しかし世界モータースポーツ評議会ではクロの判定。状況証拠は揃っていましたし、マクラーレン側(コフラン宅)に機密資料があったのは紛れもない事実。しかしそれをマシンのアドバンテージに使ったという証拠は結局出ていないと思われます。ドライバー間のメールのやり取りが話題になりましたが、それも結局チーム側は全く知らなかったみたいですし、ドライバー自身がチームに情報を渡していないと断言したのですから。

私が思うのは、結局この事件は何だったのだろうという事です。先ほども書いたように、数百ページに及ぶフェラーリの機密資料が存在したのはデニス自身も否定しなかったように、間違いないでしょう。それに対しては異論はないと思います。しかし、その資料を送ったとされるのは結局フェラーリ側なんですよね・・。ステップニー自身が資料を持ち出した・持ち出さなかったは関係なく、事の始まりは「フェラーリ側」からの動きがキッカケなんですよ。この部分に皆さんもっと注目してもらいたいと思います。マクラーレンの従業員がフェラーリに忍び込んで盗んできたはずありませんし、そんな資料が流出するのはフェラーリ内部の誰かが関与しているのは間違いないはずです。この大事件の発端となった事に対する処罰は全く議論されていないところに何を感じるか。FIAの事を「フェラーリ(F)国際(I)協力機構 Assistance(A)」と揶揄されている部分が露骨に表れた裁定だと、思わざるを得ない状況です。

今回の一件でこれほどの罰を受けるのであれば、もしAというチームがBというチームを奈落の底に突き落としたいのであれば、Aチームの機密情報をBチームに匿名で送りつけ、それをFIAに「BチームがAチームの情報を保持しているらしい」と通報すればOKですよね(笑)。しかも今回の判決を倣えば、Aチームは罰を受けるどころか無罪で被害者扱いになるんですからね・・。相手チームを幾らでもハメる事が可能だという事です。

しかしFIAは一体何をしたいんでしょう。あくまでも一般視聴者が興味を持つドライバーズタイトル争いに関しては巧妙にブチ壊さない方法を取り、チーム側には納得できないような罰を一方的に与える。以前にF1とは別の選手権を立ち上げるという事でメーカー VS FIAという図式の中、メーカー連合の中心的役割にいたフェラーリが、突如FIA側に寝返った事件。ホンダレーシング(HRD)元社長の田中氏の著書でそのあたりが詳しく書かれていましたが、親会社FIATの財政状況がかなり苦しかった事からFIAに財政的に助けてもらう代わりにコンコルド協定にサイン(FIA側につく)するといった事件です。トロロッソが急遽フェラーリエンジンを搭載決定したのも、その辺りの政治(FIA側につかせる為)が働いたと言われています。SAF1が始め認可が下りていなかったのに、全チーム合意というハードルを乗り越え、参戦認可を取り付けたのも、メーカー連合に付く事をやめさせ、コンコルド協定にサイン(FIA側につく)というのを条件にした上でFIA側が各チームに働きかけた、とも囁かれています。こういった流れからメーカー連合の力が急速に劣っていき、GPMA自体が立ち消えになってしまいましたが、フェラーリとFIAの癒着はこの頃からも囁かれていまして、最近ではそれが非常に目立つようになってきています。

しかし、今回のこういう判決は何のイメージアップにもなりませんし、フランク・ウィリアムズが懸念しているように、こういう流れはF1全体のイメージ低下を引き起こし、スポンサーマネーの減少にも繋がっていくと思います。そうなると資金力のあるメーカー系チームしか生き残れず、プライベーターチームが生き残る事は更に厳しくなっていくんじゃないかと思います。あれほど活躍し注目を浴びていたSAF1チームが現在も深刻な資金難に陥っているのも、こういう部分が影響していると考えられます。

今回の一連の事件は、将来のF1に深刻な暗雲をもたらしたと言っても過言ではないでしょう。ロン・デニスは一連の事件に対する今後の対応は、まだ口を閉ざしている状態ですので、今後のマクラーレンの動きに注目したいと思います。今週末のベルギーGP現地はこの話題で持ちきりでしょうね・・・。

最後に「フェラーリのコンストラクターズタイトルおめでとうございます」、とでも言っておきましょうか。