鈴木亜久里の挫折

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今更ながら前から読みたかった本を読みました。「鈴木亜久里の挫折~F1チーム破綻の真実~」という本で、スーパーアグリF1チームの2年半が詳細に述べられています。
今までF1記事はこのブログでも沢山書いてきましたし、特にSAF1チームに関してはかなり事細かく書いてきたのですが、様々な情報が錯綜する中で、現代の情報網というのはある程度の真実を早い段階で捉えているんだなーという驚きがまず一つでした。この本に書かれてる内容は、その当時(チーム立ち上げから活動休止まで)の様々な噂や情報が、ほぼ補完出来るかなり面白い本でした。特にチーム立ち上げ時の話では、当時ソフトバンクがどうとか色々言われていましたが、その辺りの事がかなり詳細に書かれていました。やっぱり孫氏とかなり突っ込んだ話をしていたんだなーという点(個人的にはここで上手く話しがまとまってればまた違った展開になってたかも・・・と思いますが)、そしてディレクシブとの関係やサマンサタバサの事など、立ち上げまでの事実は非常に興味深い内容で、開幕戦バーレーンにマシンを持っていきマシンを見た時の亜久里氏の心境が非常に共感できる内容でした。
後はやはり・・・。F1という魑魅魍魎の世界で、どれだけ怪しい人間がゴロゴロしているのか、というキナ臭い部分の話が印象的でした。一般人からは到底想像も出来ないような「一体何を考えてそうしようとしたのか」全く理解できない部分が実際にあるんだなぁという・・。特にSSユナイテッドとの契約不履行の内容は、とてもじゃないですが信じられない内容です。




ちょっとだけネタバレしますが、SSユナイテッドからのスポンサーマネー30億円が何時までたっても渡されないので、その半金を某証券会社(SSユナイテッドを仲介した会社)からとりあえず渡すと言われて(亜久里氏は、怪しいのでいったん断ったらしいが)振り込まれた15億円が、結局某証券会社から返せと言われて裁判沙汰になってるとか・・。本書にも書かれていましたが、本来スポンサーマネーを返すとかありえませんし、その金を振り込むと言い出したのは証券会社の方ですし、亜久里氏が本来もらえるはずだった30億円を渡せという裁判を起こすなら理解出来ますが、その逆の事が起こっているみたいですからね・・。

最後に、ホンダの事が当時色々言われていましたし、ホンダがSAF1を潰したといった批判もありましたが、やっぱり本書を読んでそれは誤解だったんだなぁと改めて思いました。撤退当時に書いたエントリーが的を外れていなくて良かったです(笑)。特にホンダ本社と栃木研究所のSAF1に対するサポートは想像以上のものだったんだなと感心せずにはいられません。当時から言われていましたがHRF1はライバルチームに塩を送るなんて事したくなかったでしょうし、それは理解できますよね。それらが混同してホンダが潰したと思われてしまったのかもしれません。

最近驚いた話では、ブラウンGPのマシンBGP001って本当ならSA09として2009年にSAF1チームが走らせていたかもしれないマシンの原型になってたかもしれないという事です。2008年の段階でカスタマーカーの問題からSAF1チームと栃木研究所とでかなり早い段階から2009年マシンの初期開発を行っていたみたいです。そのデータの共有をするかどうかHRF1に打診したら、ウチは勝手にやるというツレない返事だったそうです(笑)。しかしその後SAF1がチーム消滅。その開発進行を見たロス・ブラウンが旧SAF1スタッフを招き入れ、SA09基本コンセプトマシンを元に開発を進めたのがBGP001だったとか・・。開幕から評判の高かったFウィングは完全に栃木の開発らしいですし。
この話、運命的なことを感じさせますよね。「もしも」なんて言葉は最早何の慰めにもなりませんけども、SAF1が2009年も参戦していたなら、BGP001=SA09となってF1シーンを圧巻していたのかもしれませんから。勿論開発費がどれだけ注ぎ込めたかという部分では、HRF1の開発となって以降も潤沢な資金を注いでいたでしょうし、SAF1が開発していたとしても今の戦闘力まで持っていけたかどうかは不明です。エンジンの件もありますからね。それでも、夢を見させてくれるには十分な話だと思いました。

やっぱりホンダがF1に再び参戦する時、イギリス主導とかそんなんじゃなくて栃木の技術者が頑張って作るホンダスピリッツの溢れた参戦をしてほしいですね。本の話に戻りますが、これだけ苦労に苦労を重ねた2年半を振り返り、「やった意義はあった、俺の人生の中ではね」ってあっさり言ってのけるところが亜久里氏の器のデカさを感じさせました。もし第4期があるなら亜久里氏に是非頑張ってもらいたいです。